
新築マンションのマーケティングシステムであるマンションサマリを提供しているマーキュリーでは、新築時のパンフレットをしこたま保有しています。首都圏だけでおおよそ20年分のパンフレットなので、収蔵量は下手な本屋よりも全然多いんです。
間取り図面を眺めながら、竣工後にそこで繰り広げられるであろう日々の暮らしを想像するだけでごはん3杯はいけるという方は意外と多いはず(特に不動産業界の方)。時折現れるファンタスティックでエキセントリックな間取りを見つけると、仕事を忘れて妄想にふけてしまいます。
そんな時間を忘れさせてくれる間取り図面のすばらしさや間取りの不思議について理解を深めていくのが間取り研究部です。
第一回目の内容をご説明する前に、まずは間取り図面をご覧ください。
その①
23区の山手線の駅を最寄りとする物件です。
約10畳のリビング・ダイニングルームに約6.6畳の主寝室と、リビングの横に約6畳の洋室が設けられた2LDKのお部屋です。
アルコーブを長めに設けることで、専有面積に対して廊下の面積を少なくする、プライバシーを確保できるといったメリットがあるといえます。また、リビングと横の洋室との境をウォールドアにすることで、リビングと洋室合わせて約16畳の広々としたスペースにすることもできます。
しかも洗面室にはドラム式の洗濯乾燥機が設置されていますし、職住近接の共働き世帯や単身世帯を意識した間取りですね。
続きましてこちらの間取りをご覧ください。
その②
人気の東急線が最寄の横浜市内の物件です。駅からはちょっと距離がある物件ですね。
約8.3畳のリビング・ダイニングルームに、約6畳の主寝室、約4.0畳の洋室が2つと約4.5畳の和室を配置した4LDKのお部屋です。
こちらも先程の物件と同様、アルコーブを長めに設けて廊下を短くしています。リビング・ダイニングルームに接した約4.0畳の洋室と和室の扉に引き戸を用いることで、引き戸を開ければ最大16.8畳の広い空間が生まれます。また全ての扉が引き戸なので、急に扉を開いても扉が誰かにぶつかるといった心配もありません。
こちらの物件は間数も多いですし、複数の子供がいて、一人一人に部屋を用意したいファミリーの方や、おじいちゃん、おばあちゃんとも一緒に住みたい拡大家族を意識した間取りといえそうです。
2つの間取りともに部屋の仕切りに工夫して居室を有効に使っている点や、アルコーブを長めに設けてプライバシーを配慮している点、あとはお風呂の大きさも1317で共通項が多いですね。
ここまでだと「へぇ」とか、「普通じゃん」とか「で?」とかいう声が聞こえてきそうなのですが、
この2つの間取り
実は、専有面積が全く一緒なんです。
その広さ、61.10㎡。
実はマーキュリーが保有している間取り図面の中で、最も専有面積が狭いのがこの4LDKのお部屋。
それにしても、見た感じ4LDKタイプの方が広く見えません?
まぁ完全に目の錯覚なのですが。
よく見ると、2LDKの間取りの方は、各洋室の壁一面のクロゼットや、2、3人は入れる位のスペースを確保した洗面室など、ゆとりを持った作りになっていますね。
一方、4LDKの間取りはクロゼットや押し入れなど収納が少ないのと、洗面室が洗濯機置場の大きさと然程変わらない位狭いなど、居室以外のスペースを限りなく少なくして、居住空間に充てているのが分かります。
ランボルギーニカウンタックなど、数々の名車のデザインを手がけたマルチェロガンディーニの愛車が日本の軽自動車のワゴンRで、愛用している理由が軽自動車は限られた空間(規格)の中で機能性、安全性、デザインなど複数の相反する要素を高い次元で融合させていることによる機能美…なのは有名な話ですが、この4LDKの間取りからも、それと相通じる美しさを感じますね。
結論。
制約があった方が、良いものができるということ。知恵使うので。
時折現れる珠玉の間取りを深堀する間取り研究部の活動は今後も続きます。
次回をお楽しみに。